下顎が前に出て見える、いわゆる「しゃくれ」に関しては、見た目の問題として悩む方が多いだけでなく、医学的な観点からも重要な意味を持つ場合があります。骨格的な問題なのか、歯並びの問題なのか、あるいは単なる印象の問題なのかによって対応方法が大きく異なります。
まず、「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼ばれる状態は、歯科・矯正分野では正式な診断名であり、上顎の成長不足または下顎の過成長によって起こる骨格性不正咬合の一種です。この場合は、ただの見た目の問題ではなく、噛み合わせや発音、顎関節機能にも悪影響を及ぼすため、早期の治療が推奨されることもあります。
特に以下のような症状がある場合、単なる見た目の個性ではなく、診断・治療の対象になる可能性があります。
表 下顎前突に該当する可能性がある主な症状と診断目安
症状内容
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医学的な評価・診断観点
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横顔で下顎が前方に大きく出ている
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顎骨の前方突出、矢状方向の不調和
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上の前歯よりも下の前歯が前にある
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反対咬合(受け口)の疑い
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食べ物が噛みにくい、滑舌が悪い
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機能障害を伴う不正咬合の可能性
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顎関節や側頭部に痛み・疲労感がある
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噛み合わせのズレによる顎関節症の兆候
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遺伝的に家族に似た骨格をしている
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家族性の骨格性下顎前突の可能性
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なお、下顎前突は骨格の問題か歯列の問題かによって治療方針が異なります。歯列だけの問題であればマウスピース矯正やブラケット矯正などの方法で対応可能ですが、骨格性である場合は外科手術(セットバック法や骨切り手術)が必要となることもあります。
特に成人で骨格の成長が止まっている場合は、非外科矯正だけでは限界があるため、治療法の選択にあたっては正確な検査(レントゲン撮影、CTスキャン、模型診断など)が不可欠です。矯正歯科専門医や口腔外科の専門医による診断が、将来的なリスク回避と自然なフェイスラインの獲得に直結します。
また、患者が気づきにくい点として、以下のような質問を多く耳にします。
・顎が出てるように見えるが、どの程度で病気と判断されるのか?
・治療を受けた場合、顔の印象はどれくらい変化するのか?
・費用やダウンタイム、保険の適用範囲はどうなっているか?
・矯正だけで改善できるケースと手術が必要なケースの違いは?
・成長期のうちに治した方がよい理由は何か?
これらに明確に答えるには、専門医のカウンセリングを受けることが最善ですが、本記事では基礎的な知識をしっかり理解することで、受診の判断材料にしていただけます。